肛門のかゆみについて

お尻の病気

肛門のかゆみを引き起こす病気の殆どは『肛門搔痒(そうよう)症』によるものです。肛門搔痒症は、肛門周辺部を中心に何らかの原因によって痒みが生じるようになる病気の総称となります。
頻度は、全人口の1~5%に発生すると言われ、男性の方が、女性に比べ3~4倍多いとされています。

今回は、肛門搔痒症に関して解説をしています。

肛門搔痒症の症状


・かゆみ
はじめは肛門のムズムズした違和感から始まることが多いです。排便後や入浴後に感じることが多く、徐々に痒みに移行し、悪化すると痒みで眠れなくなることもあります。掻くことで湿疹ができると、湿疹からは浸出液が分泌され、これが更なる痒みの原因となるため、湿疹そのものが痒いと言った状態に陥り、最終的にひどい痒みを四六時中、感じることとなります。
・痛み
掻くことで皮膚に傷やびらんが形成され、痛みを感じ始めます。痛みがひどくいなると切れ痔などと勘違いされるケースもあります。

肛門搔痒症の原因

・身体的要素
肥満は肛門部の通気不良や湿潤をきたし、痒みの原因となることがあります。また、肛門部多毛も同様です。漏斗状肛門と言われる肛門が肛門管内に引き込まれた状態は、便がしみ出したり、ふき取りにくいなど痒みの原因となりやすいです。

・便通異常
肛門の痒みの原因には便秘や下痢などの便通異常があることが多いです。下痢や軟便の場合、便が拭き切れず、肛門周囲に残った便には胆汁酸という成分が含まれます。この胆汁酸による皮膚障害が痒みを引き起こすこともあります。また、便秘時の過度の息みが、粘液排泄の原因となり、この粘液が痒みの原因となる事もあります。

・食事
食材中の刺激物質が、便中に排泄され、肛門部の皮膚に付着し、刺激とな事もあります。
刺激物としては、コーヒーなどのカフェイン含有物、アルコール、タバコ、唐辛子、生ニンニクなど様々です。

・過剰衛生
洗い過ぎ、拭きすぎ、おしりふきなどのケア用品によって皮脂膜が無くなり、皮膚バリアー機能が低下すると、痒みを選択的に伝える神経線維が皮膚表面まで伸びてきて増殖します。つまり痒みを感じやすい皮膚になってしまいます。

・精神的要因
精神的に不安定な場合に痒みを感じることがあります。肛門神経症や躁うつ状態の症状にも肛門の痒みがあげられます。

肛門搔痒症の皮膚症状

肛門搔痒症で、最も多いのは肛門周囲皮膚炎です。急性期では、何の変化も認めない事が多いのですが、発赤や皮疹などを呈することもあります。
慢性期になると、肛門周囲のひだの浮腫みや色素沈着あるいは色素脱失などがみられる様になります。さらに掻くことで、擦過傷や皮膚びらん、出血などを伴うこともあります。
これらの皮膚症状は、自分で確認することが困難な部位であり、誰かに確認してもらうにも、羞恥心が伴い十分に確認ができないことや、専門的な判断が必要な場合が多いので、専門医に相談することが必要と言えます。特に、真菌感染症をはじめ、肛門部の感染症や、パジェット病などの腫瘍性疾患の鑑別が必要な場合も多く、自己判断で放置することは危険と言えます。

肛門搔痒症の検査

局所の診察のみで特別な検査を行わない場合もあります。
しかし、必要に応じ、全身検査、血液検査を行い、真菌や細菌の有無を調べるため、培養検査を行う場合もあります。
また、痔核、直腸脱などの肛門疾患の有無を確認し、滲出液の排泄が原因と考えられる場合は、大腸内視鏡検査を行い、腫瘍や大腸炎などの疾患の併存を確認します。

肛門搔痒症の治療
  • 全身疾患や肛門疾患が原因の場合はこれらの治療を行います。
  • 原因がハッキリしない特発性の搔痒症は生活習慣の指導を行うことがあります。
    局所を清潔に保つことが重要で、雑菌の繁殖を防いだり、便を刺激性にする嗜好品の制限を指導します。
    洗浄便器による洗いすぎは、必要な皮脂まで除去し、抗菌力を低下させ、皮膚炎の原因になるので注意が必要です。
    『洗い過ぎない』、『拭き過ぎない』、『おしりケア用品の使用は慎重に!』、『不要な消毒はしない!』と言った指導を行います。
  • 排便コントロールを行います。肛門のかゆみの背景には便秘や下痢などの便通異常があることが多いです。
  • 薬物療法として、ステロイド含有軟膏や白色ワセリン、亜鉛華軟膏などを使用します。また、抗ヒスタミン薬の内服などを行う場合もあります。
    原因により治療法が異なりますので、専門医と相談し、適切な治療を選択することが大切です。

お尻の痒みと言っても、原因も治療法も様々ですね。

こっし~
こっし~

肛門搔痒症は痒いだけなのでと思わず、早めに専門医に相談することが、お尻の健康を守るためには大切です。

こしいしクリニックの診察予約はこちらから

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました