代表的な肛門疾患として、痔核(イボ痔)に関して、詳しく説明します。
痔核は肛門静脈叢の瘤様変化の総称です。と言っても、何のことやらとなりますよね。簡単に言うと、肛門部の静脈が様々な要因で異常発達し、瘤(こぶ)状に発達した状態を指します。
発生部位により、肛門管にある歯状線の奥にできたのもを内痔核、手前にできたものを外痔核と言います。痔核の随伴症状として、痔核や肛門管上皮が肛門外に脱出した状態を脱肛と言います。脱出した急激にうっ血や浮腫み、血栓形成(血の塊ができた状態)により、還納不能な状態になったものを痔核発作と言います。
さらに、外痔核に続き、内痔核が脱出し、肛門外で肛門括約筋に締め上げられて血流不全となり暗赤色調になったものを嵌頓痔核と言い、著しい痛みを伴うことがあります。
外痔核は血栓形成(血豆ができる状態)による急性と、外痔核の静脈が拡張したりうっ血したりする慢性に分けることができます。
ここでは、よく見かける急性の血栓性外痔核に関して説明します。血栓性外痔核は肛門の縁に血栓(血豆)ができた状態を指します。下痢、便秘、暴飲暴食などの不摂生、過労、ストレス、力仕事、スポーツなどが原因となるとされています。
☆症状
突然、肛門の縁に血栓(血豆)ができ、痛みを覚えます。
☆治療
下痢や便秘が原因の場合、緩下剤や整腸剤を投与し、排便の負荷を軽減します。さらに、消炎剤、鎮痛剤や軟膏を使い、患部の安静や清潔に努めることで、痛みは1~2週間程度で改善することがほとんどです。血栓は、ほとんどが1か月以内には、自然に消失します。
痛みや腫れがひどい場合、血栓の部位に小さな切開を加えて、血栓のみを取り除く手術をおこなうことも稀にあります。
内痔核は、肛門管と直腸の境目にある歯状線の直腸側の、直腸粘膜下の静脈が瘤(こぶ)状に発達した状態を指します。
原因は様々なものが挙げられますが、排便時の怒責による静脈叢への負荷が直接原因と言えます。毎回の排便時間が長ければ、負荷は積み重なり、長年にわたる繰り返しにより内痔核が発生することとなります。
排便に関して、便秘は内痔核に悪影響を与えることは容易に想像できますが、慢性的な下痢によるしぶり腹や息みも強い負荷になります。また、妊娠後期(臨月)では、増大した子宮が肛門管の静脈を圧迫し、静脈叢への負荷となることで、内痔核が増悪することが知られています。
☆症状
出血、痛み、いぼ痔の肛門から脱出が3大症状として知られています。
☆痔核の重症度分類と治療法
症状 | 治療法 | |
1度痔核 | 排便時にいぼ痔が肛門管内で膨らんでいる程度の状態です。 この段階では、排便時に出血することはありますが、痛みはほとんど無く、肛門に違和感やかゆみを覚えることがある程度です。 |
軟膏や座薬により痔核の浮腫みを抑えるなど、薬物療法が中心となります。 |
2度痔核 | 排便時に、いぼ痔が肛門外に脱出しますが、排便後には自然に還納する状態です。 排便時に脱出するいぼ痔をわずらわしく感じたり、残便感や出血を自覚することが多くなります。 |
薬物療法に加え、脱出に対し、ALTA療法(ジオン注)などを考慮します。 |
3度痔核 | 排便時に、いぼ痔が肛門外に脱出し、指などで押し込まないと還納できない状態です。 腫れや痛みも感じるようになり、残便感や出血を強く感じる状態です。 |
ALTA療法(ジオン注)による療法に加え、痔核根本手術(結紮切除術)の適応となります。 |
4度痔核 | いぼ痔が肛門から脱出し、還納できない状態です。 常に不快感や痛みがあり、肛門から血液混じりの分泌物が流れ出すこともあります。 |
痔核根本手術(結紮切除術)の適応となります。 嵌頓痔核の場合、脱出部を還納し、安静加療を行い、痔核の浮腫みが改善した後での根本手術が望ましいです。 |
☆日常生活の注意
①適当な排便の実践
大便は適度な硬さで、息みの少ない排便に心がけることが重要です。排便の回数や排便のタイミングは個人差があり、個々の健康状態を維持している状態であれば良いです。便意を感じつつ、タイミングを逸し我慢してしまうことは、便秘の原因なりやすいと言えます。また、必要以上に長時間息むことは避けるべきです。便秘は肛門に負担になりやすいですが、それ以上に下痢は問題になりやすいので、注意が必要です。
②肛門の衛生に心がける
肛門を清潔に保つことは、内痔核(いぼ痔)を含め、肛門疾患の予防には有効です。適切に温水洗浄便座を用いることも重要です。
③肛門に負担がかかる作業や、運動を長時間行わない
長時間の立ち仕事や座業は肛門に負担となります。休息時間などを利用し、軽い体操や歩行を行うことが望まれます。
内痔核(いぼ痔)の症状や治療法に関して、簡単にご説明しました。
出血に関しては、内痔核(いぼ痔)以外に、様々な病気が原因となることがあります。また、内痔核(いぼ痔)が進行してしまうと、治療も大変になることがあります。恥ずかしい部位の病気ですが、思い悩まず、早い時期に受診されることが重要です。
コメント