GWが明け、今年も暑い季節がやって来ました。天気予報では早くも、連日のように夏日を報告し、間もなく真夏日も報道される雰囲気です。
※最高気温が35℃以上の日を猛暑日、30℃以上の日を真夏日、25℃以上の日を夏日といいます。
気温が上がると危険性が高くなり、注意が必要となるのは熱中症です。一般的には、最高気温が25℃を超えると熱中症患者が発生し、30℃を超えると熱中症で死亡する人の数が増えはじめると言われています。また、気温が低くても、湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、熱中症への危険が高くなります。仮に気温が25℃以下でも、湿度が80%以上ある時は熱中症に注意が必要と言われます。
熱中症は重症化すると死に至る可能性もあり、単純な病気と考えるのは危険です。しかし、正しい知識と適切な行動で防ぐことができますので、熱中症に関して解説をしていきます。
私たち人間は、暑い夏も、寒い冬も体温を37℃前後の狭い範囲に調節している恒温動物に分類されます。暑い時には、自律神経の作用で末梢血管が拡張し、皮膚に多くの血液が分布し、外気への放熱が活発となり体温低下を図ることができます。また汗をたくさんかくことで、「汗の蒸発」により熱が奪われ(気化熱)、体温の低下を促進します。しかし、大量に汗をかくことで体から水分や塩分(ナトリウムなど)が失われ、脱水状態に陥り、体が十分に対応できなければ、筋肉のこむら返りや失神(いわゆる脳貧血:脳への血流が一時的に滞る現象)を起こします。さらに、熱の産生と熱の放散とのバランスが崩れてしまえば、体温が急激に上昇します。このような状態が熱中症です。熱中症は死に至る恐れのある病態ですが、適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。また、適切な応急処置により重症化を回避し後遺症を軽減することもできます。
熱中症の発生には体調や健康状態が影響します。体調が悪い時など、体温調節機能が弱っている時は、いつもより熱中症の危険性が高まります。また、体温調節機能が十分に発達していない子どもや、脱水が進んでものどの渇きを感じにくくなる高齢者なども熱中症になりやすいので注意が必要です。
暑さに慣れていない人も熱中症に注意しましょう。最近は、温暖化の影響なのか、春の季節が短く、冬の気候から、急に真夏の暑さなんてことも増えています。このような気候の変化は、暑さに慣れる時間がありません。暑さに慣れる(暑熱順化)には、個人差もありますが、少なくとも数日から1週間かかります。それまでは、汗を上手くかくことができず、体温が上がりやすいので、春から初夏の季節でも注意が必要です。
熱中症になりやすいのは次のような人です。
- 高齢者、乳幼児
- 身体に障害がある人
- 肥満の人
- 過度の衣服を着た人
- 普段から運動をしていない人
- 暑さに慣れていない人
- 病気の人、体調の悪い人、脱水の人
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- めまい、立ちくらみ
めまいや立ちくらみ、顔がほてるなどの症状が出たら、熱中症のサインです。 一時的に意識が遠のく症状は熱中症の初期のサインとして重要です。 - 筋肉痛・筋肉のけいれん
「こむら返り」と呼ばれる、手足の筋肉がつるなどの症状が出る場合があります。 筋肉がピクピクとけいれんしたり、硬くなったりこともあります。 - 体のだるさや吐き気
体がぐったりし、力が入らない。吐き気やおう吐、頭痛などを伴う場合もあります。 - 異常発汗
ふいてもふいても汗がでる、もしくはまったく汗をかいていないなど、汗のかきかたに異常がある場合には、熱中症にかかっている危険性があります。 - 体温が高い・皮膚の異常
体温が高くて皮ふを触るととても熱い、皮ふが赤く乾いているなどの症状も熱中症のサインです。 - 呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない
声をかけても反応しなかったり、おかしな返答をしたりする。または、体がガクガクとひきつけを起こす、まっすぐ歩けないなどの異常があるときは、重度の熱中症にかかっています。すぐ医療機関を受診しましょう。 - 水分補給ができない
自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態です。この場合は、むりやり水分を口から飲ませることはやめましょう。すぐ医療機関を受診しましょう。
- めまい、立ちくらみ
環境省が公表している『熱中症環境保健マニュアル 2022』には、次のように示されています。
現場でできる応急処置を教えて下さい。
まずは、涼しい場所へ移動しましょう。
可能なら、クーラーが効いた室内や車内に移動しましょう。
屋外で、近くにそのような場所がない場合には、風通りのよい日かげに移動し安静にしましょう。
次に衣服を脱がし、体を冷やし体温を下げましょう。
衣服をゆるめて、体の熱を放出しましょう。
氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などを冷やします。皮ふに水をかけて、うちわや扇子などであおぐことでも体を冷やすことができます。
うちわなどがない場合はタオルや厚紙などであおいで、風を起こしましょう。
意識がシッカリしているなら、塩分や水分を補給します。
できれば水分と塩分を同時に補給できる、スポーツドリンクなどを飲ませましょう。
吐き気があったり、意識がない場合は、誤って水分が気道に入る危険性があるので、むりやり水分を飲ませることはやめましょう。
熱中症の予防として、日常生活での注意事項は、次の通りです。
- 暑さを避けましょう。(行動の工夫、住まいの工夫、衣服の工夫など)
- こまめに水分を補給しましょう。適度な塩分摂取も重要です。
- 急に暑くなる日に注意しましょう。
- 暑さに備えた体づくりをしましょう。
- 各人の体力や体調を考慮しましょう。
- 集団活動の場ではお互いに配慮しましょう。
- 暑さ指数の測定値などを把握しましょう。
次のようなパンフレットを参考にすることも大切です。
暑さ指数とは何ですか?
暑さ指数はTVやWebなどで公開されています。熱中症の危険度を指しますので、毎日、チェックする事が大切です。
※環境省・熱中症予防情報サイトの暑さ指数(WBST)の実況と予測はこちらから。
「新しい生活様式」でも一人ひとりの方の基本的な感染対策としてマスク着用が推奨されてきます。マスクは飛沫の拡散予防に有効ですが、マスクを着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に多くの負担がかかることが指摘されています。このことが、熱中症の発生原因となる可能性が指摘されています。さらに、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクとなります。熱中症の危険性が高い状況では、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずす事を厚生労働省も推奨しています。
また、マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。
熱中症の危険性は、年毎に高くなっています。適切な対策と、高温・多湿な環境では、各々の体力を過信せず、十分な休養と水分補給に心掛け生活する事が大切です。大丈夫であろうと思う気持ちが、重症熱中症の原因となります。日頃の健康管理を含め、気になる事があったら、専門医に相談してください。
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