ヘリコバクター・ピロリ感染症

胃の病気

近年、胃がんの原因の99%がピロリ菌感染であると言われています。さらに、日本を含むアジア圏ではピロリ菌の感染率が高い為、胃がんの発生率が欧米に比べ高いと言われています。
今回は、そんなピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ感染症)に関して、解説いたします。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。本体の長さは4μm(4/1000㎜)で、2,3回、ゆるやかに右巻きにねじれています。一方の端には「べん毛」と呼ばれる細長い「しっぽ」(べん毛)が4~8本ついていて、くるくるまわしながら活発に動きまわることができます。
胃には強い酸(胃酸)があり(pH1~2)、通常の菌は生息できません。ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を分泌し、この酵素は胃の中の尿素を分解してアンモニアを作りだします。アンモニアはアルカリ性なので、ピロリ菌のまわりの胃酸が中和され、ピロリ菌は生息できるのです。
一般に、ピロリ菌には子供の頃に感染し、ほとんどの場合、自然に消えることはなく、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると、炎症が続きます。この炎症により、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深く関わっていることが明らかになりました。

ピロリ菌感染の検査方法

ピロリ菌感染が不安だけど、胃カメラはやりたくないな。

こっし~
こっし~

まずは、胃カメラで胃炎があることを確認しないとピロリ菌の検査はできないことになっています…ゴメンなさい。

 

これは保険の規則なのですが、ピロリ菌感染の診断および除菌治療の対象は『内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされた患者』と決められているので、まずは胃カメラを行います。
胃カメラで胃炎の所見が認められ、ピロリ菌感染が原因と判断された場合、感染診断のための検査を行います。

実際のピロリ菌感染の検査を教えてください。

こっし~
こっし~

ピロリ菌感染の検査には、6種類の検査法があります。それぞれに特徴がありますので、どれを行うかは、担当医に相談してください。

日本で行われているピロリ菌感染の検査は迅速ウレアーゼ試験、 鏡検法、培養法、抗体測定、 尿素呼気試験、便中抗原測定の6種類があります。それぞれに特徴がありますが、総合的に尿素呼気試験が最も信頼度が高いと言われていいます。この方法は、絶食で来院して頂き、検査用の薬を服用し、服用前後の呼気(吐いた息)を採取して調べる方法です。
また、抗体測定法は、日本人のピロリ菌株から作られたキットが使用されるようになり、感度,特異度も高くなっています。しかし、感染直後には陽性化しないことがあり、除菌成功後もすぐには陰性化せず陽性状態が長期間続きますので、検査のタイミングには判断が必要です。

ピロリ菌感染はどんな病気の原因になるのでしょうか?

ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌がつくりだす酵素ウレアーゼと胃の中の尿素が反応して、有毒なアンモニアなどが発生することで直接胃の粘膜が傷つけられたり、ピロリ菌から胃を守ろうとするための生体防御反応である免疫反応が過剰に発現し、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こります。このことで、さまざまな病気を引き起こす可能性があるとされています。
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者さんで特に再発をくり返す場合は、ピロリ菌に感染していることが多いとされています。ピロリ菌は慢性胃炎の発症の原因や、潰瘍の再発に関係していると言われています。
さらに、胃がん、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病や胃ポリープ(過形成性ポリープ)の原因にもなると言われ、ピロリ菌感染症を放置することは、様々な意味で危険であると言えます。

ピロリ菌感染症の治療法

ピロリ菌を薬で退治することを除菌といいます。ピロリ菌の除菌により、胃がんや胃潰瘍などの関連する病気が改善したり予防できる場合があります。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のため、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることが強く勧められています。

ピロリ菌の除菌治療には、2種類の抗生物質と1種類の胃酸を抑える薬を1日2回、7日間続けて服用します。確実にピロリ菌を除菌するために、指示されたお薬は必ず服用してください。自分の判断で服用を中止すると、除菌に失敗して、治療薬に耐性をもったピロリ菌があらわれることがありますので注意が必要です。
除菌薬の副作用は、下痢、味覚障害、蕁麻疹などのアレルギー反応が挙げられます。これらの症状が見られたら、主治医に相談し、中止、継続の判断を行いましょう。

ご高齢の方の除菌療法に関しては、主治医と相談が必要です。
一般に、年齢のみで適応の有無を判断することはできません。除菌によって病気の根治が見込めるMALTリンパ腫は、年齢に関わらず感染者は除菌治療を行うべきとされています。胃癌予防の観点から、80歳以上の方は予防効果が少なく、さらに腎機能が悪い場合などは積極的に除菌を行う必要はないとされています。基礎疾患がなく、ご本人の希望がある場合には高齢であっても除菌治療を行います。

治療終了後、4~8週間以上あけて、治療効果の判定をしますが、この1次除菌治療で70%以上の方が治療に成功します。1次除菌治療で除菌できなかった方には、抗生剤の種類を変え、7日間治療します。この2次除菌治療で90%以上の方が除菌に成功しています。

除菌後のフォローは必要ですか?

ピロリ菌の除菌療法が上手くいくと、ピロリ菌が関係している様々な病気の危険性は下がりますが、ゼロにはなりません。
除菌後もきちんと医師と相談の上、定期的に胃カメラなどの検査が必要となります。

また、除菌治療成功後の再感染率は年間1%未満と報告されています。非常に稀ではありますが、ピロリ菌再感染の可能性も含め、専門医の定期フォローを受けることが重要と言え、日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、除菌一年後の胃カメラによる定期検査を強く推奨しています。

ヘリコバクター・ピロリ感染症は、胃や十二指腸の重要な病気の原因となる感染症です。長い時間をかけ様々な病気を引き起こしますので、一度、専門医に相談し、正しく対処しましょう。

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